2006年5月5日で43歳になり、日本のプロ野球界最年長選手として活躍する巨人軍の工藤公康投手。年齢を超えた彼の体力の秘密に食生活の面から迫る一冊です。著者は工藤夫人が食事について相談をした管理栄養士。
題名にあるとおり、工藤選手の若さと強さを支えているのは、日本伝統の粗食です。でんぷんをしっかりと摂るためのご飯、豆腐や味噌汁などの発酵食品、旬の野菜、そして肉ではなく魚介類中心の食事が、過度の油や糖分を避け、健康な体を作ることにつながるのです。
と、書かれていることは驚きも何もないごく当たり前のことです。しかし、これこそがいまや驚くほど珍しいことにしてしまったのが、洋食化した日本の食卓の風景です。
著者によれば、ひとは「戻ってこられる食事」を作る必要があるようです。「戻ってこられる食事」とは、子供時代に覚えた「美味しいご飯の味と香り」が埋め込まれた食事の記憶のことで、こうした正しい食事を覚えておけば、少し食生活が乱れてもひとはそこに帰ってくることができるのです。
工藤投手の実家は貧しく、粗食生活を送っていました。プロになって20代の前半で贅沢食とアルコール痛飲を覚え、肝臓を壊してしまいます。その彼が戻っていったのが粗食だったのです。
さらに著者は、工藤家の「お父さんはタイ、こどもはアジ」という食卓から、「子供には安い魚を食べさせよ。なぜなら安いということは(抗生物質を与えた)養殖魚ではなく天然ものであるから。」と説きます。またおやつは「第四の食事であるから、甘いお菓子ではなく、軽い塩おにぎりを与えよ」とアドバイスします。これも工藤家の5人の子供たちに対して実践されていることです。
先日、朝ごはんを食べずに登校する児童に軽い朝食を与える小学校が現れたという新聞記事を読みました。こんな時代に、本書にかかれていることは多くのヒントを与えてくれるのではないでしょうか。
食を通じて、生き方へつながっていく本である。スポーツを真剣にする人も、ただ楽しんでいる人も、一度は食を深く考えてみる必要がある。そのためには、最適の本である。
工藤投手が有名であり、その活躍がテレビでも観戦できることが大きい。40歳を越えてなお、すごいボールを投げていることは、多くの人が観ている事実である。しかもそれが、一度挫折を経験してからの復活であることによって、さらに説得力を持っている
理論や経験から生まれた食事の方法は、とても面白い。ただ、粗食という言葉は、本当は正しくない。観点を変えればとても豪華な食事だとも言える。とくに、旬のものをおいしく食べるというようなことは、最高の贅沢かもしれない。
何をどのように食べるかは、結果的にはどのように生きるかと通じるものである。40歳を越えた人だけでなく、若い人にも読んでもらいたい。